2022年12月9日に劇場公開された映画『ラーゲリより愛を込めて』を観てきました。
そして、心に響いたセリフをまとめてみました(一部ネタバレがあるかもしれないので、ぜひまずは観に行ってみてください!とにかく出演者のみなさんの演技がすごすぎます、圧巻です)。すでに映画を観た方は、この記事で余韻に浸っていただければ幸いです。
心に響いたセリフ
※予めご了承ください※
一部、記憶をもとに書きだしたセリフなので、一語一句正確ではないかもしれません。
心に響いたセリフ その1 生きてるだけじゃダメなんだ
戦場で仲間を捨てて逃げたことに負い目を感じ、自分は卑怯者だと自責する松田。そんな松田が、病気を患った山本を助けようとボイコット(収容所での作業拒否)を図ったときに発したことば。
生きてるだけじゃダメなんだ。ただ生きてるだけじゃ。山本さんのように生きるんだ。
ー 松田研三(松坂桃李)
ただ生きてるだけじゃ生きてるとは言わない。
ただ生きるだけじゃなくて、自分なりの信念をもって、哲学をもって生きる。
改めてそう思わせてもらえるセリフです。
心に響いたセリフ その2 私の名前は山本です
山本のことを「一等兵」と呼び、邪険に扱う相沢。
そんな相沢に対して山本が放ったことば。
私の名前は山本です。
ー 山本幡男(二宮和也)
呼び名は人の尊厳にかかわることで、呼び名次第で相手を尊重することもあれば卑下することもあることに気づかされるセリフ。
普通の人であれば「もう一等兵じゃないです」とか「名前で呼んでください」と言いそうなところを、「私の名前は山本です」と返すところに山本さんならではを感じました。キャラクターは反応に宿るとはまさにこのことだなあ、と。
映画を観ているときは、山本に感情移入しました。
しかし、元軍曹であった相沢もまた、一等兵のことを一等兵と呼んで「軍曹としての自分」を保とうとしていたのかもしれません。人間として扱ってもらえないラーゲリ(収容所)の中で、自分の尊厳を保とうとしていた1人なのかもしれません。
※人間としての尊厳を保つには、社会や組織から与えられた階級やステータスにすがるのではなく、自分の「人となり(=生きざま)」を保つことだということを、のちに相沢(そしてわたしたち映画の視聴者)は教えてもらった気がします。
心に響いたセリフ その3 美しい歌にロシアもアメリカも関係ありません
ロシア文学が好きな山本は、ラーゲリの寝床でアメリカの歌を口ずさむ。
そんな山本に対して、とある兵士が「なんでアメリカの歌?ロシアが好きなんじゃないですか?」と言ったとき、山本が返したことば。
美しい歌に、ロシアもアメリカも関係ありません。
ー 山本幡男(二宮和也)
ラーゲリに収容される中で、故郷の日本を恋しく思って日本の歌を歌う、みたいな描写はこれまでの戦争ものの映画でも見受けられました。しかし、「美しい歌に、ロシアもアメリカも関係ありません」といって、戦時中に敵国であったアメリカの歌を口ずさむ山本の姿に、「歌に罪はない」と救われる気持ちになりました。
戦争ものの映画を観ると、なんともいたたまれない気持ちになるし、人によっては、いや、誰しも映画をきっかけに特定の国への反感感情がよぎってしまうこともあるかもしれません。
でも、「美しい歌に罪はないように、国民に罪はない」と山本が伝えようとしている気がして、「戦争はひどいけど、だからこそ恨むのではなく愛しあう世界を築いていってほしい」という山本の想いを感じた気がします。
心に響いたセリフ その4 頭で考えたことは誰にも奪われない
文字を書けない新谷は、山本から文字を教わり歌を綴るようになる。
しかし、「文字で記録することはスパイ行為だ」と、ロシア兵から奪われてしまう歌を綴った紙を取り上げられてしまう。落胆する新谷に対して、山本がかけたことば。
頭で考えたことは誰にも奪われない。
ー 山本幡男(二宮和也)
心に響いたセリフ その5 山本さん、ダモイです
山本が亡くなったあと、仲間たちは日本へ帰還(ダモイ)する。
引き揚げ船に乗って、だんだん遠のくシベリアを見つめながら、松田が発することば。
山本さん、ダモイです。
ー 松田研三(松坂桃李)
『ラーゲリより愛を込めて』では、たびたび「ダモイ」という言葉が出てきます。
「山本さん、やっと帰れますね」ではなく、「山本さん、ダモイです」ということで、山本への敬意が込められている気がして、とても印象に残りました。
心に響いたセリフ その6 みんなで記憶しましょう
「頭で考えたことは誰にも奪われない」ー このセリフは仲間たちの心にも残ります。そのしるしに、病気を患った山本が書いた遺書の内容を家族のもとに届けるために、遺書の全文を仲間たちが「記憶」するから。遺書のように文字で残すこと、記録することが禁じられていたラーゲリ。遺書をロシア兵に没収されては、山本の遺志を家族に届けることはできない。そこで仲間たちが思いついた方法は、記録の代わりに記憶することでした。
みんなで記憶しましょう。
ー 新谷健雄(中島健人)
心に響いたセリフ その7 記憶はできてます
松田が大切にもっていた山本の遺書を、ロシア兵が取り上げてしまう。
心配そうに松田を見つめる原に対して、松田がかけたひとこと。
記憶はできてます。
ー 松田研三(松坂桃李)
「覚えてます」とせず、「記憶はできてます」ということばを選んだところに、とてもグッときます。遺書は記録するものだけど、記録できないなら記憶しようー そんな仲間たちの意志が滲みでているセリフです。
さいごに
『ラーゲリより愛を込めて』の英語タイトルは『Fragments of the Last Will』。
Fragmentsとは、断片やかけらという意味。
Last Willとは、最後の意志。
山本の遺書を「記憶」して、遺書の内容を日本の家族へ届ける仲間たち。
山本が亡くなったあとも、山本の意志は仲間へ、家族へ、そして山本の子孫に留まらずこの映画を観たわたしたちにも受け継がれていく。
そんなことを彷彿させるタイトルで、とても素敵だと思いました。
ではではっお読みいただきありがとうございました!