新海誠監督の世界観に虜になったきっかけである、映画『言の葉の庭』。
四半期に1回、無性に観たくなる日がやってくるのですが、今日がその日でした。笑
シナリオを学び始めてから観るのは今日が初めて。
シナリオを学ぶ中で、1つ1つのセリフと描写がいかに大切で難しくて奥深いかを思い知るのですが、シナリオを学ぶ中で改めて『言の葉の庭』を観ると...
今まで無意識の中で反射的に心に響いていたセリフと描写が、いかに緻密に編み出されたものだったかに気づきました。
どんな言葉が心に響くかは、人によって違うし、そのときの状況によっても違う。
ただ、改めて『言の葉の庭』を観て心にしっとり染みわたるセリフと描写がたくさんあったので、ストーリーの流れに沿って共有させてください。
現実逃避したくなるぐらい理不尽なことが起きたとき、少しでもこのセリフたちを思い出して、みなさんの心が晴れたら嬉しいです。
※まだ映画を観たことがない方は、ネタバレになるのでぜひ先に映画を観てください!
I. 映画『言の葉の庭』に登場する名台詞
みなさんが今まで観た映画の中で、心から離れないセリフは何ですか?
今日は、観る者の心に降り注いで止まない『言の葉の庭』に登場する名台詞たちをご紹介します。
映画の余韻を残すためにも、あえて解説は省きます。
※考えるよりも感じろ!といったところでしょうか。
どうせ人間なんて、みんなちょっとずつおかしいんだから
まるで、世界の秘密そのものみたいに、彼女はみえる
この人は、いかにも優しそうに話す。まるで壊れものに触れるみたいに。でも、息をするのもつらかったあの頃、あなたは周りの声ばかりを聞いていて、私を信じてはくれなかった
あの人に会いたいと思うけれど、その気持ちを抱え込んでいるだけでは、きっと、いつまでもガキのままだ。だから何よりも俺は、あの人がたくさん歩きたくなる靴をつくろうと、そう決めた
鳴る神の 少し響みて(とよみて) さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ
雨が降ったら君はここに留まってくれるだろうか?
そういう歌に対して、雨なんか降らなくても、ここにいるよって答えてる
それに私、学校中の人に知られちゃってると思ってたから。でも君は、違う世界ばっかり見てたのね
雪野さん、俺、雪野さんが好きなんだと思う
>雪野さんじゃなくて、先生でしょ。私はね、あの場所で、1人で歩けるようになる練習をしてたの。靴がなくても
だから?
>だから、今までありがとう、秋月くん
俺、やっぱりあなたのこと嫌いです。最初からあなたはなんだか、イヤな人でした。
歩く練習をしていたのは、きっと俺も同じだと、今は思う。いつかもっと、もっと遠くまで歩けるようになったら、会いに行こう。
いかがでしたか?
『言の葉の庭』と名付けられているだけあって、言葉が美しすぎる映画ですよね。
雨音の中に生きた言葉が染みわたる、素敵な映画をありがとう、新海誠監督!
II. なぜ『言の葉の庭』はこんなにも美しい?
新海誠監督の作品は、五感で楽しませてくれる映画。
音楽のように耳から離れないセリフ、ずっと見ていたくなる繊細で奥深い描写...
まだシナリオを学び始めた超初心者なので、映画の描写についてあれこれ言える立場ではありませんが、 『言の葉の庭』に登場する素敵な設定と描写をご紹介します。
◆ ある一定の条件が揃ったときだけに逢える。
雪野先生と孝雄の2人が逢える条件は「雨の午前中」。
いつでも行けば逢えるのではなく、雨が降った午前中だけに逢えるという縛りが、2人の淡くて純粋な心情に拍車をかけています。
◆ 現実の世界にどこか疑問を感じ、神秘の世界に想いを馳せる。
「靴をつくることだけが、俺を違う場所に連れて行ってくれるはずだということ」という孝雄のセリフに、現実ではないどこか別の世界への想いが滲みでています。
映画の冒頭に描かれる6月の東京は、満員電車に人がひしめき合うじめじめした場所。
一方で、雨が降る日の新宿御苑に存在する世界は、まるで現実とは思えないほど美しい世界。
◆ 世間が嫌うものを美しく描く。
梅雨の季節に降り続ける雨だったり、人がひしめき合うじめついた東京だったり...
一部の人は好きかもしれませんが、大半の人は嫌いと思ってしまうような雨と東京を、新海誠監督はとても美しく描いています。
『言の葉の庭』がきっかけで雨を好きになった人も多いのではないでしょうか?
※わたしはその1人です(秘)。
◆ 自分の中のルールよりも、自分の想いが強くなったとき、主人公はルールを破る。
雨の日の朝にしか新宿御苑を訪れなかった孝雄。
でも、雪野先生が孝雄の通う学校の先生であったこと、仕事を休んで新宿御苑に隠れていた本当の理由を知ったとき、孝雄は「雨が降った朝にだけ新宿御苑に行く」という自身が貫いてきたルールを破って、晴れの日に雪野先生に逢いにいきます。
◆ 自分の想いを貫くことが本当に正しいのかという葛藤。
雪野先生が学校に行けなくなった理由は、雪野先生が教え子である男子生徒に手を出したというデタラメを女子生徒が流したから。
本当は雪野先生は男子生徒に手を出してなんかいないのに、男子生徒が一方的に雪野先生を好きになってしまっただけなのに、嘘のウワサのせいで生徒にいじめられ、学校に行くのが怖くなってしまった雪野先生。
そんな背景があるにも関わらず、心のどこかで孝雄への想いが芽生えていることに戸惑い、孝雄への想いを封じようとする。
しかし、自分の想いに正直になり、孝雄のあとを追うために家を飛び出して泣きながら駆け出すシーンはまさに心をえぐられる美しさ。
◆ 残酷な言葉のウラに隠された、ピュアで素直な主人公の気持ち。
「俺、やっぱりあなたのこと嫌いです」とのセリフを皮切りに、雪野先生に対してさんざんひどい言葉を浴びせる孝雄。
残酷な言葉が繰り出されるにも関わらず、1つ1つの言葉からは孝雄の雪野先生への気持ちが滲み出ています。
「最初からあなたはなんだかイヤな人でした」と言い放ったときの孝雄の表情からは、むしろ愛おしさが読み取れます。
まるで「最初からあなたはなんだかイヤな人でした。なぜなら僕の心を無性に惹きつけてしまう何かをもっていたから」と言いたいかのよう。
そしてそんな言葉のウラで息をしている孝雄のピュアで素直な本当の気持ちを全部感じ取ったかのごとく、孝雄がさんざん暴言を吐いたあとに孝雄に抱きついて泣きだす雪野先生。
2人が抱きしめあって泣きだした瞬間に空が晴れだす瞬間は、まさに孝雄の言葉に隠された想いが伝わったことを空が喜んでいるかのよう。
本当にグッときます。
III. それでも世界は美しいと思わせてくれる、新海誠監督の世界観
ここまで書いて思ったのですが、新海誠監督の世界観が本当に好きです。
ただ野放しに世界は美しいと賛美するのではなく、
そう思わせてくれるから。
自然の美しさ、
日本の文化と言葉の美しさ、
もがきながらも希望を見出そうとする人の美しさー
まだ言の葉の庭を観たことがない方へ。
新海誠監督の大ヒット作「君の名は。」と「天気の子」を観て心を揺さぶられた人へ。
ぜひ言の葉の庭を観てみてください。
きっと雨も、世界も、今よりちょっと好きになります。
すでにわたしなんかよりずっと新海誠監督の大ファンだよって方へ。
弟子入りさせてください!
▼ 映画『言の葉の庭』予告編
それではみなさん、ここまで読んでくださってありがとうございました。
わたしは人混みが苦手ですが、新海誠監督のおかげで東京が少し好きになりました。
新海誠監督、それでも世界は美しいと信じ続けさせてくれて、ありがとう!