Story of Japanese Young Leader in Changing Somali Gangs
アクセプト・インターナショナル(ACCEPT INTERNATIONAL)代表の永井陽右さん。早稲田大学在学中に「比類なき人類の悲劇」と呼ばれたソマリアの紛争問題を知り、日本で唯一のソマリアに特化したNGO「日本ソマリア青年機構(アクセプト・インターナショナルの前身」を設立。ソマリアの若者がテロリストにならないよう、ギャングの社会復帰支援などを行なっている団体。数々の受賞経験をもち、海外メディアからも注目を集める永井さんが書き下ろした著書「僕らはソマリアギャングと夢を語る」より、永井さんの熱い想いをご紹介します!
I. 僕らに何ができる?そんなときに出会った「REALIZATION」の精神
「ソマリアの人々を救いたい。僕たちにできることは?いや、僕たちだからこそできることは?」
お金も知識も経験もないー
そんな学生がソマリアに対して何ができるのか?
ソマリアを救いたいとの想いを大学の教授や国際協力の活動家、NPOに熱弁しても、
「ソマリアは危険だ。やめておけ。行ったら死ぬ」
と一蹴される日々。
そんな中、大学の教授からの紹介で知り合った建築家の坂田泉さん。
坂田さんは、ケニアの社会問題を解決するためのさまざまなプロジェクトを行なう<OSAジャパン>の代表を務めているとのことで、永井さんは早速坂田さんに会うことに。
永井さんがソマリアの紛争問題を解決したいこと、そのためにどのような手段を取るべきか悩んでいることを打ち明けると、坂田さんにこんな言葉をかけられたそうです。
<以下、著書より抜粋↓>
「永井君が僕に一番大切にしている言葉を教えてあげよう。それは『Realization』という単語。これには”気づく”と言う意味と”現実化”という2つの意味がある。日本人に何ができるか、ソマリア人に何ができないか、どうやって助けるか、それらを先に考えてしまってはもったいない。まずはお互いが気づき合い豊かな関係性を築くこと、そこにはまさに無限の可能性がある。そしてそのなかにある何かを丁寧に形にする、そのRealizationがお互いの原点になれば、それ以上に素敵で有意義なことはないと僕は思っているよ。」
この言葉を受けた永井さんは、著書で当時の気持ちをこう述べています。
「気づき、理解し合い、そのうえで何かを形作る。対等な関係を築いたり、理解し合ったりすることが目的なのではないし、闇雲にアクションをするのとも違う。ここに違和感はひとつもなかったし、何より無限の可能性を感じた。」
いきなり解決策に取り掛かろうとするのではなく、まずは理解・気づき(Realize)。その後に行動して現実化(Realize)。
この2つの意味が込められた「Realize」精神は、仕事においても将来の夢においても、とても大切だと思います。
アウトプット重視で仕事をしていると、「いかに成果を出すか」ありきで考えてしまいがちですが、具体的な方法論を考える前に、まずは理解し、気づくこと。
II. 真の国際協力とは
「国際協力」と聞いて、肯定的なイメージを持つ人もいれば、否定的なイメージを持つ人もいる。
そんな中で、永井さんが出会った山本敏晴さんの言葉。
「『本当に意味のある国際協力』とは、自分がやりたいことをやって『自己満足にひたる』のでも、自分に専門性があることをやるのでもなく、『それ』が必要なことであれば、自分がどんなにやりたくないことでも実行し、専門性が必要ならそれを身につけていこうと努力してゆく、『姿勢』を言うのである」
自分がやりたいことをやって自己満足にひたるのではないー
この部分については今までも考えていたことですが、
自分がどんなにやりたくないことでも実行ー
この部分については今まで考えたことがありませんでした。
もともと国際協力に関心があったため、
「苦行になるかもしれないけれど、やりたいからやる。」
そんな風に考えていました。
「やりたいからやる」という精神は、モチベーションを持続させるためにも大切だと個人的には考えているのですが、山本さんの言葉が示唆するように、
自分の「やりたいからやる」を大切にしすぎると、相手が本当に必要としていることを見落としてしまいがちになるのかもしれない、と思いました。
会社のプロボノ(=本業のスキルを社会貢献活動に活かす活動)として「いかに社員にボランティアへ参加してもらうか」と向き合う中で、今までは「いかに社員の”やりたい”を芽生えさせるか」について考えていました。でも、本当に意味のある社会貢献活動をするのであれば、社員がやりたくないことでも実行することも必要になってくるのかもしれない。ボランティアという言葉の本来の意味は、「自発的に行なうもの」であって、強制されてやるものではない。だから、社員に対してやりたくないことを押し付けることはできないし、押し付けたところでやってくれる人はきっといない。ただ、ボランティアの1歩先である「本当に意味のある社会貢献」を目指すのであれば、もはや社員がやりたいことだけではなく、社員がやりたくないようなことでも、ニーズがある限りは取り組む必要があるんだろう、と思いました。会社の社会貢献活動としてどこまで本気を出すかによるかもしれないし、社員に対して無償でボランティア参加を求める以上は「やりたくないことをやらせる」ことは非現実的かもしれません。
となると、プロボノでボランティアイベントを企画する上では、せめて以下のことは大切にしていきたいなあと思います。
・「やりたいことをやる」ときは、やりたいことが「ニーズ」にちゃんと応えているか再確認する
・「やりたくないことをやる」ときは、やりたいことに近づくように工夫する
III. 僕の夢
ソマリアの平和に向けて活動する永井さんの夢。
数々の困難に直面しつつも、信念を持って、ソマリアに向き合い続ける永井さん。
そんな永井さんがソマリア人の友人に電話越しで「ヨスケの夢は何だい?」と聞かれたときー
永井さんは「僕の夢は、君と友だちであり続けることかな。」
永井さんが携わってきた中で、社会復帰を遂げたソマリアのギャング(若者)もいれば、友だちだったのに一変して永井さんを激しく憎むようになり、「イスラム法廷でお前を裁く」と脅迫してくる人もいるとのこと…
「僕は彼らの友だちでいられるのだろうか、いてもいいのだろうか、いるべきなのだろうか。」
(永井さんの言葉を著書から抜粋)
そんな永井さんが放つ「僕の夢は、君と友だちであり続けることかな」という言葉。
ニーズがあるところに向き合う。
そして向き合い続ける。
ふと思ったことですが、本当に強い人は、傷つきやすい気がします。
実は強がっているだけで心は繊細だからとか、免疫がついていないからとかではなく、
傷つくとわかっている戦場に自ら飛び込むから。
本当に強い人は、傷つかまいと防備グッズを取り揃える人ではなく、傷つかないよう防備グッズを取り揃えつつも、傷つくことも承知の上で自らの信念を守ろうとする人。
守りたいものがある人は、信念がある人は、傷つきやすいかもしれない。時には命を落とすようなリスクを背負うかもしれない。
そんなリスクをみんなが背負うべきと言いたいわけではありません。
ただ、思うことは、守りたいものがあるとき、信念があるとき、人は1番強くなれる。
強いがゆえに傷つくこともあるかもしれないけれど、強い=傷つかないことではない。
信念があるって、すごいこと。
純粋にそう思った日曜日の朝でした。