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北極星のみつけかた

秀逸な心理描写!『きみの瞳が問いかけている』の名台詞とシーン

Netflixで配信が始まった、吉高由里子さんと横浜流星さんのW主演映画『きみの瞳が問いかけている』。

みなさんは、もう観ましたか?

 

事故で視力を失った女性と、暗い過去を引きずる元キックボクサーの男性。自分を責める2人の男女が、赦しを求める中で癒えていく物語だと思いました。

自分を責めたくなるようなことをしてしまったことは、誰しもあると思います。
でも、そんなときに心に染みる言葉を届けてくれる、素敵な作品。

 

この記事は、脚本を学ぶ身として、映画『きみの瞳が問いかけている』に出てくるシーン、小道具の使い方、伏線、セリフ等々をまとめてみました。

映画の余韻に浸りたい方、映画を脚本的に分析したい方のお役に立てれば幸いです!

※ネタバレ含みます※

 

公式】『きみの瞳が問いかけている』吉高由里子×横浜流星 恋愛映画史を涙で塗り替える、最高純度のラブストーリー/10/23(金)/本予告 -  YouTube

 

 

あらすじ 

以下、Netflixより

事故で視力を失った女と、暗い過去を持つ元キックボクサーの男。互いの存在に安らぎを見出してゆく2人の前に、過去の事件と抗えない運命が立ちはだかる。

 

心に響いたセリフ

自分の過去を悔やむ塁。

そんな塁に対して、明香里とシスター(塁が育ったキリスト系孤児院のシスター)が投げかけるセリフがじーんときます。

 

明香里「ガラスもここまで削れたら誰も傷つけない。傷ついたことがある人は優しくなれる」

 

シスター「忘れないでアントニオ。あなたを許していないのは、あなただけなのよ」

 

心に響いたシーン

明香里と塁が2人でTVドラマを観るシーン

→塁(24歳男性)の淡いピュアな恋心が滲み出ていてよい!

目が見えない分、匂いに敏感な明香里。携帯電話も持っていないほどお金のない塁は、髪はボサボサ、靴もボロボロ。靴からは汗の匂いが。塁と明香里が2人でTVを観ていたとき、「(臭いから) 窓開けていい?」と言われた塁は、新しい靴に買い替える。

「新しい靴の匂いがする」と、明香里が靴を買い替えたことに気づいたときも、恥ずかしくてつい買い替えたことを隠そうとする塁のあどけないピュアな感じがよい!

 

さらに...

目の見えない明香里は、「主人公はどんな服装?イヤリングはしてる?」などと、ドラマのキャラクターについて塁に尋ねる。

そのとき、イヤリングをつけていた明香里に対して、

「そのイヤリングと似たようなイヤリングをしているよ」

と、恐らく明香里のお気に入りであろう主人公と明香里が似たイヤリングをしていると答えるシーン。

明香里は「え?ほんと?」とあどけない笑顔を見せて喜ぶ。

しかし、実際に主人公はイヤリングなどしていない。

塁は、目の見えない明香里をからかっていたわけではなくて、ただただ明香里の喜ぶ顔が見たかったんだろうなって思えるシーン。

 

明香里が、手の感触を頼りに塁の顔を粘土の模型で再現するシーン

→いなくなってしまった塁。やるせない気持ちにさいなまれる明香里の気持ちが滲み出ていて切ない...!

目の見えない明香里は、塁の顔を見たことがない。

ただ、目が見えていた大学生時代は彫刻を学んでいたこともあり、目が見えないながらいにも、塁の顔を手でなぞってはどんな顔か想像していた。

塁がいなくなってしまった今も、当時の手の感触を頼りに、塁の顔を粘土で再現する明香里。

せっかく手術で目が見えるようになったのに、塁の顔を直接見ることができない。

粘土で再現した顔しか見ることができない。

粘土でつくった塁の顔の模型を手でなぞりながら涙する明香里。

小説の文字ではなく映像だからこそ、よりぐっとくるシーンでした。

 

塁が明香里にあげたオルゴール。塁がオルゴールを聞いて涙するシーン

→塁と明香里、2人の互いを想いあう気持ちが滲み出ていて切ない...!

明香里の前から姿を消してから2年後。

手術で目が見えるようになった明香里は、自身のインテリアショップを開店。

明香里がいない間にお店に訪れる塁は、店内にオルゴールを見つける。

そのオルゴールは、バスの中で明香里が歌っていた曲をオルゴールにして、塁が明香里にプレゼントしたもの。 

そのオルゴールを流して涙する塁。

オルゴールを通じて互いの気持ちが伝わるシーン!

 

小道具

  • 金木犀
  • ガラスの破片
  • オルゴール

 

伏線

  • 塁の手にやけど跡があることを知る明香里 → 病院で明香里と塁が再会するシーンで、明香里に正体を気づかれないように、やけどを手で隠す塁
  • 塁の名前はアントニオ → 明香里がのちに開いたインテリアショップの名前はアントニオ
  • 明香里のために犬をプレゼントする塁 → 犬が塁を追いかけることで、明香里と塁を引き合わせるために犬が一役買う
  • バスに乗っていた明香里と塁。明香里が鼻歌を歌う → バスの中で歌っていた曲をオルゴールにする

 

最後に|映画『きみの瞳が問いかけている』から脚本的に学んだこと

映画『きみの瞳が問いかけている』は、脚本を学ぶ身として、大変学びの多い作品でした。脚本を学んでいると、「心に響くシーンってなんだろう?どうやって作るんだろう?」「途中で飽きてしまう映画とテンポのよい映画の違いって何だろう?」といったことを考えるのですが、映画『きみの瞳が問いかけている』を通じて、答えを教えてもらった気がします。

 

備忘録としてまとめると...

 

心に響くシーンとは何か?

映画『きみの瞳が問いかけている』を観たことで、「心に響くシーンとは、登場人物の心理がビシビシ伝わってくるシーンのこと」だと感じました。心理描写が巧みであれば巧みであるほど、心に響くんですよね!

 

テンポのよい物語とは何か?

1. 説明しなくても視覚的にわからせることで、余計な説明を省くこと。

たとえば、映画の中で、塁が前に付き合いのあった半グレ集団から、明香里が狙われていることを暗示するシーンがあります。

これを何秒で暗示したかというと、なんと5秒以下!

塁が明香里を家まで送ったとき、明香里の家の玄関ドアの外側には、半グレ集団のシンボルの落書きが赤色のスプレーで大きく描かれていました(このとき、明香里は目が見えないので気づきません。シンボルに気づいたのは塁だけ)。
そのシーンの直後に、同じシンボルのタトゥーが刻まれた半グレ集団の手を見せることで、「あ、塁への復讐として、明香里が狙われているんだな」ということがわかります。

このように、「視覚を使って視聴者にわからせること」は、小説というより映画だからこそ活きてくる技であり、テンポよく物語を進めるためのコツでもあります。

 

2. 次々と主人公に降りかかるハプニングを発生させることで、物語を前に進めること。

ほっこりするシーンはほんの束の間で、一件落着したと思ったら次の瞬間にまたハプニングが起こる。映画を通じて、カットバック(幸せなシーン、悲劇のシーン、幸せなシーン... と交互に繰り返すことで、ドキドキハラハラを生み出すこと)がたくさん使われていると、テンポよく物語に引き込まれていくんだなあと実感しました!