超人気アニメ『鬼滅の刃』のヒットを支える重大要素の1つがキャラクター。
ファンからの絶大な支持を集めるキャラクターは、カンペキな美男美女とは限らない。
むしろ、現実世界にいたら全然ダメダメなのに、なぜか応援したくなってしまう。
みなさんにも、そんなつい推してしまうキャラクターはいるのではないでしょうか?
今日は、脚本を学ぶ筆者の視点から、『鬼滅の刃』に出てくるキャラクターを考察し、キャラクターが魅力的な理由について解説してみます。
フィクションの世界では、ただの美男美女はウケない!?
突然ですが、 B'zの名曲『イチブトゼンブ』に、
愛し抜けるポイントが1つありゃいい、それだけでいいのに。
という歌詞が出てきます。
魅力あるキャラクターを描くには、ずばり、愛し抜けるポイントを1つ作ればいい。
というのも、脚本スクールで学んだことは、人は美男美女には惹かれないということ。
正確に言うと、実世界では美男美女は愛されますが、映画の世界では愛されない。
なぜなら、面白くないから。
美男美女が奇跡的に出逢って恋に落ちて...
っていう映画は、絵的には美しいかもしれませんが、なんだか面白みに欠ける。
なぜでしょうか?
それは、共感(=感情移入)できないから!
世の中全員が美男美女かといえば、そうではないし、奇跡的に出逢って恋に落ちるなんて素敵なことは、ごく一部の人にしか起こらない(多分)。
だから、美男美女が恋に落ちてすんなり結ばれるラブストーリは、共感できない=面白くないのです!笑
面白い映画の鉄則は、観客を感情移入させること。
観客は、映画の主人公に感情移入して、主人公に起こる数々のハプニングを「自分ごと」として捉えて一喜一憂することで、初めて心を動かされる。その映画を面白いと思える。
だから、主人公に感情移入できなければ、主人公の物語を「他人ごと」としてしか捉えられず、どこかシラけた気持ちで映画を観ることになる。
じゃあ、観客の心をわし掴みにするキャラクターを描くにはどうすればいいのか?
脚本スクールで学んだ黄金比率があります。
それはずばり...
9:1の法則!!!
※9:1の法則とは
誰もが共感できる/ダメダメなところ9割:誰にもマネできないような強み1割を持ち合わせること
たとえば、普段は飲んだくれで態度の悪いダメダメの叔父さん。
基本的に「ダメな奴」だけど、そんな叔父さんが甥の誕生日のためにプレゼントを密かに買いに行く・・・
ダメダメ9割の叔父さんに、そんな1割の優しさが垣間見えたら?
なんだか叔父さんが魅力的に見えませんか?
これこそがずばり、9:1の法則です。
これってつまり... ギャップ萌えのこと!笑
なので、これより先は、この9:1の法則を、
ギャップ萌えの法則
と呼ぶことにします。
では、早速ギャップ萌えの法則を『鬼滅の刃』に当てはめてみましょうっ!
竈門 炭治郎 (かまど たんじろう) は、鬼滅隊なのに・・・?
炭治郎は、ひとことでいうと「鬼滅隊なのに鬼に感情移入してしまう優しい青年」です。
「鬼に感情移入してしまう」という性質は、鬼を抹消すべき身分である鬼滅隊としては致命傷かもしれません。
でも、みんなから醜いと嫌われる鬼を”ただの鬼”とみなすのではなく、「もともとは自分と同じ人間だった」と鬼のことさえも自分ごと化する情に厚い炭治郎の姿勢は、人間としての炭治郎の魅力を引き立てています。
とはいえ、炭治郎はしょせん鬼滅隊。
だから、どんなに鬼に感情移入しようと結局は自らの手で鬼を殺めなければいけない。
でも、鬼への憎しみ100%で鬼をばっさばさ切り殺す主人公と、自分の家族を殺した鬼のことを憎みつつも、もともとは人間だった鬼を殺すことへの虚しさを抱きつつ鬼を殺める主人公だったら、後者の方が深みがでる。
鬼に感情移入してしまう優しい炭治郎を特に印象づけるのは、鬼の死に際シーン。
鬼の死に際では、鬼が人間だったころの切ない思い出と、鬼になった経緯が描かれる。
いざ死ぬとなってやっと人間だった頃の記憶を取り戻し、自分が鬼になって犯した過ちを悔やむ鬼の姿を見て、炭治郎は鬼の痛みを感じ取ります。そして鬼を憐れみます。そんな炭治郎の姿を見て、鬼もどこかほっとした気持ちで死んでいく。
「こんな優しい目、見たことない」と・・・。
そして、鬼が死んだ後も、炭治郎は鬼をちゃんと供養する。
炭治郎は、鬼滅隊としてではなく、人として鬼を供養する。
誰もが鬼を嫌う中、炭治郎だけは、鬼の痛みを感じてやれることができる。
鬼に自分の家族を殺されたにも関わらず、「鬼にも鬼になりたくて鬼になったわけじゃない」と鬼の境遇を憂うことができる炭治郎。
もし自分の家族が鬼に殺されたら、炭治郎のように鬼に対しても優しくできるのか?
多分、できないと思います。
そんな「誰もがマネできないようなキラリと光る何か」をもっているからこそ、炭治郎はキャラクターとして愛されるのでしょう。
竈門 禰豆子 (かまど ねずこ) は、鬼なのに・・・?
禰豆子は、ひとことでいうと「とにかくかわいい」です。
(すみません、ふざけました・・・笑 でも、一理あると思うんですよ!だって、鬼になってしまった女の子に男性陣を感情移入させるには、ビジュアル抜群な子を選ぶのが1番ですから・・・笑)
さてさて、真面目に話すとして笑
禰豆子はひとことでいうと、「鬼なのに人間を守る異端児」でしょう。
鬼になったことがないからわかりませんが、普通、鬼になったら、人間を喰わずにいるなんて無理ですよね?
それなのに、人間を喰うどころか、人間を喰う代わりに寝ることを生きる糧にするという特殊能力を身に着け、兄を守るために必死に戦う禰豆子。
(こんなにかわいいのに強いっていうギャップもたまりませんよね・・・)
兄を守るために、自分が犠牲なろうとも鬼に立ちはだかるひたむきな禰豆子の姿。
「鬼としての禰豆子」には感情移入できないとしても、「鬼になっても妹として兄を守る禰豆子」の兄弟愛は、観る者を惹きつけてやみません。
嘴平 伊之助 (はしびら いのすけ) は、見た目はイカついのに・・・?
伊之助は、ひとことでいうと「見た目はイカついのに案外乙女」!
猪の被り物で隠しているものの、実はかわいい童顔の持ち主だったり、体を張って自分のことを守ってくれる炭治朗に顔をぽわぽわさせていたり・・・。
ちょっと伊之助のギャップ萌えポイントはこれぐらいしか見つからなかったので、伊之助ファンのみなさん、ぜひ補足してください!笑
我妻 善逸 (あがつま ぜんいつ) は、超臆病者なのに・・・?
善逸は、ひとことでいうと「女好きで超臆病者なのに、いざというとき強い鬼滅隊」!
かわいらしいビジュアルなのに女好きだなんて、なかなか想像できないですよね笑。
つまり、9:1の法則(ダメダメ9割:憧れ1割)を説明するにはもってこいのキャラです!笑
『鬼滅の刃』を観たことがある人はすでにお察しの通り、善逸は超へなちょこ。
鬼滅隊といえば「恐ろしい鬼に刀1つで立ち向かう勇敢な剣士」を想像しがちですが、そんな我々の想像を見事に裏切ってくれるのが善逸。
基本的に鬼退治の命令が来ても逃げてばっかりだし、結婚して鬼滅隊を辞めるために女の子を口説きまわってるし・・・
これだけ聞いてると「いいとこないじゃん!」って思いがちですが笑、
善逸は、極限状態の恐怖に陥ると、超強くなるんです笑。
恐怖のあまり気絶して、夢遊病のような状態になって起き上がる。
そして今までには微塵も感じられなかった勢いで、鬼を斬る。
そんな超臆病者と超強者のギャップに、世の女性は心を掴まれることでしょう・・・笑
人気キャラクターの秘密は、ギャップ萌えにあり!
さてさて、『鬼滅の刃』のキャラクターから学べることは、ギャップ萌えをもったキャラクターはウケるということ。普段はダメダメなのに、実はこんなかっこいいところを持ち合わせているだとか、誰もが共感できる弱みをもっているけど、誰にもマネできないようなこんなすごいところがあるだとか・・・
現実世界でも同じことが言えるかもしれませんが、「●●なのにXX」といったギャップを持ち合わせているキャラクターは、観る者の心をわしづかみにしてしまいますね!
ダメダメなところと、誰もが憧れてしまうような素敵な一面を持ち合わせたハイブリッド型キャラクターを描けるよう、意識していきたいですっ!