Airbnbの急成長を牽引したGustaf Alstromer氏が「どうやって顧客を獲得して成長するのか」について語った動画の内容をまとめます!
Gustaf Alstromer - How to Get Users and Grow
https://www.youtube.com/watch?v=T9ikpoF2GH0
- スタートアップ=成長がすべて。成長を予測することは可能?
- 飛躍的成長の前兆を示す「PMF」を測る方法
- コンバージョン率を最適化してプロダクトを成長させるコツ
- プロダクトと顧客の性質によって、最適な手段は異なる
- データドリブンな意思決定の重要性
- Airbnbにみる『Experiment Review』の文化
- サマリ
スタートアップ=成長がすべて。成長を予測することは可能?
スタートアップは成長がすべて。
2004年にローンチしたFacebookは、圧倒的な成長を遂げた。
一体彼らは何をしたのか?
2008年 - 多言語対応
2010年 - モバイル対応
2014年 - Internet.orgと共同でオフラインだった人をオンラインにした
これらの施策の結果、Facebookのユーザー数は、当初の予想(4億ユーザー)よりはるかに多い人数(20億ユーザー)を獲得することに成功した。
成長を100%予測することはできないが、これから成長するかどうか、正しい軌道に乗っているかどうかを見極めることはできる。
飛躍的成長の前兆を示す「PMF」を測る方法
PMF(Product Market Fit)を達成したスタートアップが必ず成功するわけではない。ただ、PMFはスタートアップがこのままの方向性で進むと成功するか失敗するかを見極めるための判断基準になる。判断基準を設定する方法は下記の通り。
STEP 1. PMFを果たせたかどうかを見極めるための数値指標を設定する
下記のように、時間/日/月/年いずれかの単位で測れる指標を1つ決める
Airbnb - 予約数(年単位)
Facebook - アクティブユーザー数(日/月単位)
Gusto - 給与明細(隔週/月単位)
Lyft - ライド数(週/月単位)
Checker - 確認したバックグラウンドの数(日/時間単位)
Stripe - トランザクション数(日/時間単位)
STEP 2. 設定した指標値と実際値を測る
自分たちのプロダクトがイケてるか否かを見極めるには、下記のようなグラフ(横軸は時間経過、縦軸はSTEP 1で決めた指標)を作って可視化すること。
<リテンション率を指標に設定した場合>
【PMFはありそう...!】Shopify
▼課金ユーザー数:1カ月後は10%、2年後は12%
⇒最初の1カ月で多くの課金ユーザーを失っているが、2ヶ月目以降は減少していない
⇒PMFはありそう
⇒オンボーディングに問題があるだけなので、そこを直せば成長できそう
【PMF失敗...】Blue Apron
▼課金ユーザー数:1カ月後は50%、2年後は10%
⇒時が経つにつれて課金ユーザーの数が右肩下がり
⇒一概には言えないが、PMFはなさそう
▼課金ユーザー数:1年後は70%、7年後は30%
<上記以外で測る方法>
ユーザーがまだ10人しかいない場合、リテンション率を測るのではなく、ユーザー全員に直接下記のような質問を聞けばいい。
・もし私のプロダクトを使えなくなったらどう思いますか?
PMFを測る方法は上記以外にもありますが、このようにグラフで可視化するとよりPMFがうまくはまっているのか否か現実を見ることができそうです。
コンバージョン率を最適化してプロダクトを成長させるコツ
PMFを達成しているか測るために、そしてPMFを達成した後に成長するために、コンバージョン率の最適化は必須。単純に見込み客を⇒顧客にするというコンバージョンだけでなく、見込み客から顧客になるまでの道のりを段階別に分けて、それぞれの段階でのコンバージョン率を上げることが重要。
コンバージョン率を上げるにあたっては、「ファネル」を意識することがカギ。
ファネルとは、直訳すると「漏斗(=逆三角形の形をした器具)」のこと。
購買フェーズとその人数を図式化したもので、購買に近づけば近づくほど人数が減ることを示しています。
どのように顧客にアプローチするのか(=顧客が自社を知る入口)次第でファネルの中身も変わってくるのですが、参考までにレファラルのファネルをどのように作るのか、そしてどのようにコンバージョン率を上げるのかについて下記に共有します。
Referral Funnel
口コミ=ユーザーがプロダクト体験/評価を友人に話すこと
レファラル=より多くのユーザーがプロダクトを友人に勧めることを促進すること
レファラルの方法は2つ。
1. 友人へのおすすめ/シェアを簡単にする
2. 金銭的インセンティブを用意する
⇒Airbnbでは上記2を行なった。
▼レファラルのファネルを因数分解するとこんな感じ。
▼レファラルのファネルをさらに分けるとこんな感じ。
上記のように分解が終わったら、各パーツで最適化を行なって全体的な最適化を図る。
たとえばAirbnbの場合は、上記図の上から3つ目(Users sending invites + sharing)のステップにおいて、既存ユーザーに「友達にAirbnbを紹介してくれたら$40あげるよ!」との金銭的インセンティブを込めたメールを送ったそうです。
プロダクトと顧客の性質によって、最適な手段は異なる
▼レファラル以外にも、顧客にアプローチする方法はいくつもあります。
例)Paid Growth
広告などにお金を払って顧客を増やそうとする手法。
意識すべきは下記項目。
・顧客獲得コスト(CAC) ※1ユーザーを獲得するためにかかる/かけているお金
・ライフタイムバリュー(LTV)と返済タイム
・アトリビューション
・広告
例)SEO
SEOはもう時代遅れだと言われることもあるが、決してそんなことはない。
だからこそ、下記のような対策が必要。
・On-page最適化
まずはキーワード検索(どのキーワードが人気?どのキーワードで1位になる?)
どのページをどのキーワードで検索結果にトップ表示されてほしいかを決める
SEOの実験をしまくる
・Off-page最適化
外部リンクを把握(どのメディアが自社についてどんな記事を掲載してるか?)する
第三者メディアに自社プロダクトについて書いてもらう
データドリブンな意思決定の重要性
どのファネルを選ぶかをはじめ、1つ1つの意思決定は運命を左右する。
だから、意志決定を勘や度胸だけに頼るのはリスクが高すぎる。
Most of the world will make decisions by either guessing or using their gut. They will either be lucky or wrong.
ほとんどの人は、勘や度胸をもとに意思決定をする。
彼らの行く末は、運に恵まれるか失敗するかのどちらかだ。
この言葉が語るように、もし勘や度胸に頼って下した意思決定によっていい結果が待っていたのだとすれば、それはただ単に運がよかっただけだ。
でも、毎回運に恵まれるとは限らない。
だからこそ、意志決定のフレームワークを設定する必要がある。
Airbnbにみる『Experiment Review』の文化
Airbnbでは、データドリブンな意思決定を促進するため、必ずA/Bテストを徹底してから意思決定を行なうようにしている。
Airbnbでやっていることを体感するためのエクササイズをやってみよう。
エクササイズ① 下記のうち、どちらのUIがより多くのシェアを促進したか?
<Thinking Time>
▼答えは右!
エクササイズ② 下記の内、どちらがより多くのサインアップ数を獲得したか?
<Thinking Time>
▼答えは右!
⇒このようにA/Bテスト(=意志決定のフレームワーク)があれば、権力がある人、主張が強い人の意見をもとに意思決定がなされる事態を回避できる。データドリブンな意思決定は、チーム内の不満をなくすためにも失敗を軽減するためにも重要。
サマリ
スタートアップが成長するために大切なことは下記の通り:
1. スタートアップ=成長
2. リテンション率を測る
3. 成功を測るための指標を決め、現実と理想のギャップを埋める
4. 実験(A/Bテスト)の文化を根付かせる
PMFの段階では、誰に使ってもらえるかを考えるのにリサーチと思考の時間を割くより、まずはいろんな人に使ってもらって誰が残るかリテンションを測るのも大切なんだなと気づいた講義でした。
今後もY Combinatorをはじめとする海外のスタートアップにまつわる知見を逆輸入していきたいと思いますので、よろしくお願いします!